カタログやパンフレットなどの印刷物、企業サイトやECサイトなどは企業の顔とも言える重要な販促ツールです。
そのため必ず「校正」というプロセスを経て、内容の正確性や視覚的な整合性を確認します。
校正を専門の校正者に依頼すると「校正ですか? 校閲ですか?」と聞かれる場合も多いと思います。
校正と校閲は似た言葉ですが、両者はそれぞれの役割が異なり、作業範囲が違うためです。
ここでは、校正と校閲の意味や目的、違いを中心に、作業範囲や確認すべきポイント、表記の揺れを解説します。
校正と校閲の違いとは?
文章を書いたあとに欠かせないのが「見直し」の作業です。
ここでよく耳にするのが「校正」と「校閲」という言葉です。
似たような意味に思われがちですが、実は役割がまったく異なります。
校正とは
校正とは、一言で言えば「どう見えるか」を確認する作業です。
文章の文字や記号の誤りを修正する作業を指します。
たとえば、変換ミスによる誤字脱字、句読点の打ち間違い、あるいは「ホームページ」と「ウェブサイト」のように表現が混在している場合の統一など、主に文章の表面的な部分に目を光らせます。
文章そのものの意味には深入りせず、ルールに基づいて正確な文字表記を整えていく、非常に緻密で根気のいる作業です。
校正の目的
― 読者に“正確さ”と“信頼”を届ける ―
校正の目的は、文章を「正確で読みやすく、信頼に足るもの」に仕上げることです。
その目的をいくつかの側面から詳しく見ていきましょう。
誤りを正すことで「正確な情報」を届ける
細かなミスを見逃さず修正することは、読み手に正しい情報を届けるという、文章の基本的な使命を守ることにつながります。
表記を統一し、文章の「読みやすさ」を保つ
使用する表記や用語を一貫させることで、文章のトーンやリズムを整え、スムーズに読める状態に仕上げることで、読者のストレスを減らし、情報を受け取りやすくするという点で非常に重要です。
書き手の意図を損なわずに伝えるための「品質管理」
書き手の伝えたい内容が、余計なミスや曖昧さによって損なわれないようにする“品質管理”の役割も果たしています。
校閲とは
校閲とは、一言で言えば「どう書かれているか」を確認する作業です。
文章の内容に踏み込んで、事実関係や論理の整合性を確認します。
たとえば「東京タワーの高さは444メートル」といった事実誤認があればそれを正し、人名や地名が正確かどうかを確認し、さらには文章の前後で矛盾がないか、読者に誤解を与える表現になっていないかまでチェックします。
また、無意識に使われた差別的な表現や、不適切な言い回しが含まれていないかも見逃してはいけません。
校閲の目的
― 内容の正確さと社会的責任を守る“最後の審判” ―
校閲とは、文章の意味や事実内容に踏み込み、「情報の正確性、論理の一貫性、そして社会的妥当性を確認する」作業です。
その目的をいくつかの側面から詳しく見ていきましょう。
事実確認による「情報の正確性」の確保
事実の誤りを事前に防ぎ、読者に正確な情報を届けることが基本的な役割のひとつです。
論理や文脈の矛盾を防ぐ「一貫性」のチェック
文脈やストーリーの一貫性を確認し、論理破綻や記述ミスを正すことで、文章全体の説得力を高めます。
読者への配慮としての「表現の適切さ」
読者にとって不快や誤解を招く表現がないかを客観的な視点で見直し、社会的な責任を果たす役割を担っています。
校正/校閲の作業範囲と確認すべきポイント
校正の場合
誤字・脱字
- 入力ミス(例:【誤】indesgin」→【正】indesign)
- 抜けている文字や不要な文字の挿入(例:【誤】あたかい→【正】あたたかい)
- 誤字(例:【誤】耳触り→【正】耳障り)
表記の揺れ
表記の揺れとは、同じ意味を持つ言葉が統一されているか、日付や数値などの表記が統一されているか?をチェックする作業です。
統一は校正作業で非常に重要で手間がかかる作業であり、ルールが必要です。
具体的な例や作業方法については、こちらで詳しく解説します。
デザインやレイアウトの正確性
- フォントや文字サイズの統一
- 文字詰めや行間の不自然なずれ
- 画像や図表の位置とキャプションの一致、ボケていないか?
印刷物やデジタルコンテンツでの見え方
- ノンブル(ページ番号)や柱、ツメ(インデックス)が正しく付いているか?
- デジタルコンテンツならリンク先に正しく飛ぶか?
- 印刷物ならばトンボ(印刷の裁断線)が正確かどうか?
- 索引・目次の内容と参照ページが正しいか?
校閲の場合
事実確認
- 数値やデータが正しいか(例:「製品の耐久性は10年」→実際の耐久試験に基づくか)
- 商品仕様や価格が最新の情報か
- 法的に問題がないか(例:著作権、商標、保証の記載)
論理性と文脈の整合性
- 前後の記述が矛盾していないか(例:「色は赤、青、緑の3色」→「赤と青の2色展開」)
- 不明確な表現がないか(例:「簡単に操作できる」→具体的にどう簡単なのかを説明)
ターゲットに合った内容か
- 読者が理解しやすい言葉やトーンになっているか(専門用語の多用は避ける)
- カタログの目的(販売促進、認知拡大など)に沿ったメッセージか
文化的・地域的な適合性
- 海外向けカタログの場合、現地の文化や規範に合っているか
- 日本語特有のニュアンスを英語など他言語に適切に翻訳できているか
全体の一貫性
- カタログ全体のトーン&マナーが揃っているか
- 他の資料(ウェブサイトやパンフレット)と矛盾していないか
表記の揺れとは?
コンテンツに表記の揺れがあると、読者が文章の意味を正しく理解する妨げになったり、雑然とした印象を与えます。
特にビジネスコンテンツの場合、注意不足や品質の低さを示すものと見なされ、信頼性が薄れます。揺れにはどのようなものがあるか、下記に挙げます。
同じ単語の異なる表記
- カタカナ語:
- 「コンピュータ」と「コンピューター」
- 「インターネット」と「ネット」
- 英語表記で「Catalog」と「Catalogue」の混在
漢字・ひらがな・カタカナの使い分け
- 「下さい」と「ください」
- 「お客様」と「お客さま」
- 「ホームページ」と「ウェブサイト」
数字表記
- 「10個」と「十個」
- 「3,000円」と「3000円」
年月日・時間表記
- 「2025年」と「令和7年」
- 「2024年12月27日」と「2024/12/27」
- 「午後2時」と「14:00」
単位表記
- 「kg」と「キログラム」
- 「mm」と「ミリメートル」
まとめ
「校正」と「校閲」は、どちらも文章をより良いものに仕上げるために欠かせないプロセスです。
それぞれが異なる視点から文章をチェックし、読者にとって読みやすく、信頼できる文章をつくり上げています。
近年では、こうした作業を効率化するためのツールも進化しており、紙とデジタルの原稿や異なる版同士を比較し、微細な差異まで自動で検出してくれる高精度な検版ソフトもあります。
視認ミスや見落としを防ぐ補助として導入する企業も増えており、特に大量の原稿や複雑な修正が発生する現場では、非常に心強い存在です。


人の目と技術の力をうまく組み合わせることで、これからの「見直し」はさらにスマートに、そして安心できるものになっていくでしょう。
