カタログやパンフレットなどの印刷物やe-bookやサイトなどのデジタルコンテンツは、企業の顔とも言える重要なツールです。そのために、制作時には必ず「校正」というプロセスを経て、内容の正確性や視覚的な整合性を確認します。校正に似た言葉で「校閲」がありますが、両者はそれぞれの役割が違います。
ここでは、校正と校閲の違い、見るべきポイント、表記の揺れを防ぐ方法、校正の作業フローそしてデジタルでやる方法について解説します。
校正と校閲の違いとは?
校正と校閲の違いは、内容に踏み込んで赤字を入れるか否かです。校正は、単純な間違いや見た目で分かる誤りを指摘します。一方校閲は、内容に踏み込んで文章の意味や文脈に影響を与える赤字を入れます。校正は「どう見えるか」を、校閲は「どう書かれているか」を確認する作業と言えます。
校正の範囲
文章の誤字・脱字や文法ミス、表記の統一、レイアウトの正確性をチェックする作業です。
校閲の範囲
内容や意味の正確性を含めた修正に注力します。校閲者は、文法や構文を正すことで文の正確性や論理性を高める役割を担います。
校正と校閲の作業フロー
理想的には、校正で表記の揺れを修正し、校閲で適切な表現を判断する流れが効果的です。例えば、
- 校正で「お客様」と「お客さま」、「ホームページ」と「ウェブサイト」などの揺れを指摘する。もしくは統一する。
- 校閲で「この表記はターゲットにとってわかりやすいか?」を確認する。
などです。以下に校正・校閲それぞれのポイントを挙げます。
校正で確認すべきポイント
誤字・脱字
- 入力ミス(例:「誤」→「語」)
- 抜けている文字や不要な文字の挿入(例:「あいさつ」→「あいさ」)
表記の揺れ
表記の揺れとは、同じ意味を持つ言葉が統一されているか、日付や数値などの表記が統一されているか?をチェックする作業です。統一は校正作業で非常に重要で手間がかかる作業です。表記の揺れの具体的や例や効果的な方法については、こちらで詳しく解説します。
デザインやレイアウトの正確性
- フォントや文字サイズの統一
- 文字詰めや行間の不自然なずれ
- 画像や図表の位置とキャプションの一致、ボケていないか?
印刷やデジタルでの見え方
- ノンブル(ページ番号)や柱、ツメ(インデックス)が正しく付いているか?
- 印刷物ならばトンボ(印刷の裁断線)が正確かどうか?
- 索引・目次の内容と参照ページが正しいか? デジタルコンテンツなら正しく飛ぶか?
校閲で確認すべきポイント
事実確認
- 数値やデータが正しいか(例:「製品の耐久性は10年」→実際の耐久試験に基づくか)
- 商品仕様や価格が最新の情報か
- 法的に問題がないか(例:著作権、商標、保証の記載)
論理性と文脈の整合性
- 前後の記述が矛盾していないか(例:「色は赤、青、緑の3色」→「赤と青の2色展開」)
- 不明確な表現がないか(例:「簡単に操作できる」→具体的にどう簡単なのかを説明)
ターゲットに合った内容か
- 読者が理解しやすい言葉やトーンになっているか(専門用語の多用は避ける)
- カタログの目的(販売促進、認知拡大など)に沿ったメッセージか
文化的・地域的な適合性
- 海外向けカタログの場合、現地の文化や規範に合っているか
- 日本語特有のニュアンスを英語など他言語に適切に翻訳できているか
全体の一貫性
- カタログ全体のトーン&マナーが揃っているか
- 他の資料(ウェブサイトやパンフレット)と矛盾していないか
表記の揺れ
コンテンツに表記の揺れがあると、読者が文章の意味を正しく理解する妨げになったり、雑然とした印象を与えます。特にビジネスコンテンツの場合、注意不足や品質の低さを示すものと見なされ、信頼性が薄れます。揺れにはどのようなものがあるか、下記に挙げます。
同じ単語の異なる表記
- カタカナ語:
- 「コンピュータ」と「コンピューター」
- 「インターネット」と「インターネットサービス」
- 英語表記で「Catalog」と「Catalogue」の混在
漢字・ひらがな・カタカナの使い分け
- 「下さい」と「ください」
- 「お客様」と「お客さま」
- 「ホームページ」と「ウェブサイト」
数字表記
- 「10個」と「十個」
- 「3,000円」と「3000円」
年月日・時間表記
- 「2024年12月27日」と「2024/12/27」
- 「午後2時」と「14:00」
単位表記
- 「kg」と「キログラム」
- 「mm」と「ミリメートル」
表記の揺れを防ぐ方法
スタイルガイドを作成する
表記の統一に必要なルールを文書化したスタイルガイドを用意します。
- 用語(例:「お客様」を採用する)
- 数値の書き方(例:「3,000円」と記載する)
- 日付のフォーマット(例:「2024年12月27日」を採用する)など。
ツールの活用
表記ゆれを自動検出する無料の校正ツールやソフトウェアを活用する方法もあります。ここではMicrosoft WORDの「検索・置換」機能を使う方法をご紹介します。
検索と置換の基本機能を使用
表記の揺れを検出するには、「検索と置換」機能を活用します。
手順
- 「検索と置換」ダイアログを開く
- ショートカットキー:
Ctrl + H
(Macの場合はCommand + H
)を押します。 - または、リボンメニューの「ホーム」タブから「編集」グループの「置換」をクリック。
- ショートカットキー:
- 検索語を入力
- 検索ボックスに、チェックしたい表記の1つを入力します(例:「メール」)。
- 表記の揺れ候補が複数ある場合(例:「Eメール」「eメール」)、それぞれを順番に検索します。
- 結果を確認
- 「次を検索」をクリックして、文書内で該当箇所を1つずつ確認します。
- 一覧で確認したい場合は、「ナビゲーションウィンドウ」を有効にすることで見やすくなります。
- 修正または統一する
- 必要に応じて、「置換後の表記」を入力し、「すべて置換」を選択して一括修正できます。
- 重要な場合は、1件ずつ確認して置換することをおすすめします。
ワイルドカードを使った高度な検索
Wordの検索機能では、ワイルドカードを使って表記揺れのパターンを効率的に検出できます。
手順
- ワイルドカード検索を有効にする
- 「検索と置換」のダイアログを開いたら、「詳細設定」をクリック。
- 「ワイルドカードを使用する」にチェックを入れます。
- 検索パターンを入力
- 表記揺れの可能性がある単語をワイルドカードで検索します。
例:- 「メール」「Eメール」「eメール」を検索する場合:
*メール
と入力。これで「メール」で終わるすべての単語を検出できます。
- 「メール」「Eメール」「eメール」を検索する場合:
- 表記揺れの可能性がある単語をワイルドカードで検索します。
- 修正や置換を実行
- ワイルドカード検索結果を1つずつ確認しながら修正するか、一括置換を行います。
校正を効率的にやるには
紙に出力してチェック
デジタル画面では気づきにくいミスも、紙に印刷すると発見しやすくなります。特に、レイアウトの崩れや細かなフォントのミスが見つかることが多いです。また数字が多い場合、二人1組で声に出して読み合わせすることも効果的です。
複数の担当者による確認
一人で校正するよりも、複数の目でチェックすることで、見落としを減らすことができます。社内の担当者や外部の校正者など、異なる視点での確認が有効です。
時間を空けて再確認
同じ作業を続けると見落としが発生しやすくなります。時間を空けてから再確認することで、冷静な目でミスを発見しやすくなります。
校正時の注意点
細部のチェックを徹底する
誤字脱字はもちろん、文字のフォントサイズや行間、画像の位置などの細かい部分も徹底的に確認しましょう。小さなミスでも、全体のクオリティに影響を与えます。
リンクやQRコードの動作確認
デジタルカタログや印刷物に含まれるリンクやQRコードが正しく機能しているかを確認することも重要です。ミスがあると顧客が正しく情報にアクセスできません。
カラーモードの確認
印刷物とデジタルの色味は異なることがあるため、CMYKカラーモードで正確に表示されているかを確認します。印刷後に色がずれてしまう問題を防ぎます。
デジタル検版ソフトの活用
PDF比較のツールが便利
修正前後のPDFを比較して差異を見つけるBitMatch Premiumのようなデジタル検版ツールを活用しましょう。フォントの変更、レイアウトのズレ、文字間の異常など、目視校正では見逃してしまう微細な変化を自動的に検出でき、修正漏れもすぐにわかるので、DTPオペレータが修正段階の確認で使うと、非常に効率的です。
修正していないのに変わってしまった箇所がすぐに見つけられる
組版修正の段階で、オペレータが修正していない箇所が変更されている場合があります。いわゆる「赤字外変化」も、デジタル検版ツールは「差異」として表示します。「赤字外変化」に気がつかず、そのまま校了して印刷事故につながるケースがよくあります。
時間とコストの削減
人手による校正では時間がかかる作業も、デジタル検版ツールを使うことで迅速に確認でき、作業時間を大幅に削減できます。また、ミスによる再印刷のコストも削減できます。
まとめ
校正チェックは、印刷物やデジタルコンテンツの品質を確保し、コスト削減や納期遅延を防ぐために欠かせないプロセスです。効率的に校正・校閲を行いましょう。